■オニオンフライとフライドポテトとパンが運ばれてきた瞬間がピークだった |
■先日、会社のA君とB君と拙僧とで久しぶりに男三人で食事でも、ということで、某所のステーキ屋に行ってきました。金曜の夜、にぎわう店内。「このメンツでメシってのも久しぶりだよね〜」みたいな方向性で浮き立ってる我々三人。メニューを持ってくる店員さん。
■A君がメニューを開きながらこう云いました。
A「せっかくだからさー、ステーキ食べる前にビール飲みながらなんかつままない?」
B+拙僧「あ、いいね、そうしよそうしよ」
同調するB君と拙僧。
そして、巨大なカリフラワーみたいな、変な盛りつけののオニオンフライを一皿と、フライドポテトを二皿、それに、ビールを発注するわれわれ。
■数分後、巨大カリフラワーのように盛りつけられたオニオンフライ一皿と、フライドポテト二皿、それにビールを持ってくる店員さん。店員さんはパンも持ってきてました。このパンはサービスだということです。
とりあえず乾杯して、ビールを口にし、オニオンフライとフライドポテトとパンを食し始めるわれわれ。パンがほんのり甘くて美味しい。
■しかし、この注文、大きなミスがひとつあります。おわかりですか?
そう。
この時点では、われわれは完全に忘れてるのです。
われわれが三人とも30代後半だということを。
■あのさー、35過ぎたらさー、もうオニオンフライとフライドポテトだけで腹いっぱいになるぜ、こんなもん。
いや、一人で黙々と多量のメシかっこむんだったらいいよ。いくらでも食えるとは云えないまでも、それなりには食える。
でもさ、みんなでビール飲んで、話して、ツマミつまんで、ビール飲んで、話して、ツマミつまんで、というローテーションでゆっくりゆっくりやってるとさ、まあ、食はそんな進まないよね。
■巨大なオニオンフライの山を7割がた片付けて、二皿あったフライドポテトも一皿は平らげたかな、くらいのタイミングで、ビールと、そしてパンのお代わりをするわれわれ。
そして、ひきつづき談笑しておりました。
■で、われわれ三人でオニオンフライとフライドポテトとパンを平らげたところで、A君は云いました。
A「よし、じゃあ、そろそろステーキ頼もうか」
その一言で、にわかに、われわれのテーブルは、ちょっと微妙な空気に支配されました。
そう。
われわれは、気づいてしまったのです。
もう、まあまあ満腹だということに。
そしてわれわれは、ここにきてようやく思い出したのです。
われわれが三人とも30代後半だということを。
■うん。タマネギとイモとパンを食べながらビール飲んでたら、そりゃ、それだけで腹もいっぱいになってきますよ。そういう年齢ですよ。
正直いって、このままステーキを食べないで解散のほうがありがたかった。A君もそうだし、B君もそうだろう。
とはいえ、ここはステーキ屋だ。タマネギとイモとパンだけで退店するのは、どうか。そもそも、今日はみんなで肉を食おう、という建前のもと、われわれ三人は集合してしまっている。
肉、たのむしかない。要らないが。
■店員さんを呼び、A君はステーキを、B君は骨付きラムの盛り合わせのようなややこしい一皿を、拙僧はハンバーグを発注。
問題はここからです。肉が運ばれてくるまでの数分が長いこと長いこと。もう、三人とも完全に「これ以上、いまさら食えねーよ…」という気分なのです。でも、その一言が、なんか云い出せないのです。
お互いがお互いに満腹であることを悟られないよう会話を続けるゲーム
になってましたね、完全に。
云えない。最初にオニオンフライとフライドポテトとパンが運ばれてきた瞬間がピークだったなんて、そんなほんとうのこと云えない。
「もう満腹になったからさ、今日のところは帰ろうよ」と誰も提案しない。あるいは提案できない。なんだろうこの謎の空気は…。
この、「金曜の夜、久しぶりに集まっての、ステーキ屋での楽しい食事会」っていう設定を死守するために、肉を食べなければならない。それも、あたかも美味しそうに。
■注文して数分後、容赦なく運ばれてくるステーキとラム盛り合わせとハンバーグ。
口々に、うん、おいしい、うまいね、やっぱ肉だね、ビール進んじゃうねー、などと、演技しながら食べるわれわれ。B君に至っては、再度メニューを開いて、「あ、おれポップコーンシュリンプも頼んじゃおうかな?」などと独自の演劇メソッドに基づいたセリフを発射する始末。たぶん、三人が三人とも「おれがとっくに満腹ってことに、他の二人は気づいてないぞ、しめしめ」と思ってたはずです。
でも料理の減り具合は正直なもので、三人とも、皿の上の付け合わせにはほとんど箸をつけておりませんでした。B君と拙僧は、どうにかこうにかラムとハンバーグをそれぞれ食べきりましたが、A君はステーキをちょっと残していました。ちなみに拙僧がなぜハンバーグを発注したかというと、メインディッシュの中でいちばん胃に負担が少なそうだったからです。会計を済ませて解散するわれわれ。
■このステーキ屋は米国系の店で、味はまあ、はっきり云って大味なんですね。結局、いちばん美味しかったのはパンでした。肉がもうちょっと美味しかったら、ありがたかったんですけど。
ちなみにこの日の会計は一人頭6000円でした。おい、まあまあの焼肉が食える額じゃねえか。焼肉のほうがよかったかな…。
いや、誰も悪くない。ほんと誰も悪くないんですよこの話。
■A君がメニューを開きながらこう云いました。
A「せっかくだからさー、ステーキ食べる前にビール飲みながらなんかつままない?」
B+拙僧「あ、いいね、そうしよそうしよ」
同調するB君と拙僧。
そして、巨大なカリフラワーみたいな、変な盛りつけののオニオンフライを一皿と、フライドポテトを二皿、それに、ビールを発注するわれわれ。
■数分後、巨大カリフラワーのように盛りつけられたオニオンフライ一皿と、フライドポテト二皿、それにビールを持ってくる店員さん。店員さんはパンも持ってきてました。このパンはサービスだということです。
とりあえず乾杯して、ビールを口にし、オニオンフライとフライドポテトとパンを食し始めるわれわれ。パンがほんのり甘くて美味しい。
■しかし、この注文、大きなミスがひとつあります。おわかりですか?
そう。
この時点では、われわれは完全に忘れてるのです。
われわれが三人とも30代後半だということを。
■あのさー、35過ぎたらさー、もうオニオンフライとフライドポテトだけで腹いっぱいになるぜ、こんなもん。
いや、一人で黙々と多量のメシかっこむんだったらいいよ。いくらでも食えるとは云えないまでも、それなりには食える。
でもさ、みんなでビール飲んで、話して、ツマミつまんで、ビール飲んで、話して、ツマミつまんで、というローテーションでゆっくりゆっくりやってるとさ、まあ、食はそんな進まないよね。
■巨大なオニオンフライの山を7割がた片付けて、二皿あったフライドポテトも一皿は平らげたかな、くらいのタイミングで、ビールと、そしてパンのお代わりをするわれわれ。
そして、ひきつづき談笑しておりました。
■で、われわれ三人でオニオンフライとフライドポテトとパンを平らげたところで、A君は云いました。
A「よし、じゃあ、そろそろステーキ頼もうか」
その一言で、にわかに、われわれのテーブルは、ちょっと微妙な空気に支配されました。
そう。
われわれは、気づいてしまったのです。
もう、まあまあ満腹だということに。
そしてわれわれは、ここにきてようやく思い出したのです。
われわれが三人とも30代後半だということを。
■うん。タマネギとイモとパンを食べながらビール飲んでたら、そりゃ、それだけで腹もいっぱいになってきますよ。そういう年齢ですよ。
正直いって、このままステーキを食べないで解散のほうがありがたかった。A君もそうだし、B君もそうだろう。
とはいえ、ここはステーキ屋だ。タマネギとイモとパンだけで退店するのは、どうか。そもそも、今日はみんなで肉を食おう、という建前のもと、われわれ三人は集合してしまっている。
肉、たのむしかない。要らないが。
■店員さんを呼び、A君はステーキを、B君は骨付きラムの盛り合わせのようなややこしい一皿を、拙僧はハンバーグを発注。
問題はここからです。肉が運ばれてくるまでの数分が長いこと長いこと。もう、三人とも完全に「これ以上、いまさら食えねーよ…」という気分なのです。でも、その一言が、なんか云い出せないのです。
お互いがお互いに満腹であることを悟られないよう会話を続けるゲーム
になってましたね、完全に。
云えない。最初にオニオンフライとフライドポテトとパンが運ばれてきた瞬間がピークだったなんて、そんなほんとうのこと云えない。
「もう満腹になったからさ、今日のところは帰ろうよ」と誰も提案しない。あるいは提案できない。なんだろうこの謎の空気は…。
この、「金曜の夜、久しぶりに集まっての、ステーキ屋での楽しい食事会」っていう設定を死守するために、肉を食べなければならない。それも、あたかも美味しそうに。
■注文して数分後、容赦なく運ばれてくるステーキとラム盛り合わせとハンバーグ。
口々に、うん、おいしい、うまいね、やっぱ肉だね、ビール進んじゃうねー、などと、演技しながら食べるわれわれ。B君に至っては、再度メニューを開いて、「あ、おれポップコーンシュリンプも頼んじゃおうかな?」などと独自の演劇メソッドに基づいたセリフを発射する始末。たぶん、三人が三人とも「おれがとっくに満腹ってことに、他の二人は気づいてないぞ、しめしめ」と思ってたはずです。
でも料理の減り具合は正直なもので、三人とも、皿の上の付け合わせにはほとんど箸をつけておりませんでした。B君と拙僧は、どうにかこうにかラムとハンバーグをそれぞれ食べきりましたが、A君はステーキをちょっと残していました。ちなみに拙僧がなぜハンバーグを発注したかというと、メインディッシュの中でいちばん胃に負担が少なそうだったからです。会計を済ませて解散するわれわれ。
■このステーキ屋は米国系の店で、味はまあ、はっきり云って大味なんですね。結局、いちばん美味しかったのはパンでした。肉がもうちょっと美味しかったら、ありがたかったんですけど。
ちなみにこの日の会計は一人頭6000円でした。おい、まあまあの焼肉が食える額じゃねえか。焼肉のほうがよかったかな…。
いや、誰も悪くない。ほんと誰も悪くないんですよこの話。