■歌舞伎、パタリロ、歌舞伎。師走の芝居と正月の芝居。 |
■十二月二十三日(金・祝)
忠臣蔵第三部 於 国立劇場
8〜11段目。下女の“りん”とか、丁稚の伊吾とか、そういう役どころの人々が好きだったりする。 これはおれの性格。討ち入りのとこは、全体的に少々間延びした印象がなくはなかったけど、米吉が良かった。
■十二月二十四日(土)
舞台「パタリロ!」 於 紀伊國屋ホール
行きたかったのに、前売券がずっと手に入らないままだった舞台。当日券は、まさかのくじ引きだった。運良く買えてよかった(くじに外れてそのまま帰る人も少なからず目撃…)。
芝居の内容は、まあ、ファミ通のクロスレビュー風に書くと「原作ファンなら」、と云ったところか笑。いや、パタリロがいて、バンコランとマライヒがいて、タマネギ部隊がいればそれはもう『パタリロ!』だから。どんなドタバタも、どんな不条理も呑み込んで成立させてしまうフォーマット、それが『パタリロ!』だから(細かい“くすぐり”をガシガシ入れてくる小劇団的作風も、『パタリロ!』の作品世界と良くマッチしてたと思う)。
なので、逆に云えば、各キャラクターの再現度が高くないと、『パタリロ!』にはならないのですね。でもこの点は抜かりがなくて、パタリロはちゃんとパタリロだった。これ、地球上に加藤諒がいなかったら成立しなかった舞台だったと思う。この世に加藤諒がいて良かった。バンコランとマライヒも、バンコランとマライヒだった(マライヒがいささか三枚目寄りだったような気はしますが・笑)。そして特筆すべきは、タマネギ部隊のオンとオフの切り替えの描写でしょうなあ。「タマネギ部隊は実在した!」って思っちゃったよ。
平成30年には早くも続篇が予定されているようですが、松竹もぜひパタリロ歌舞伎をやってほしいところです。パタリロ役は猿弥(49)で。
■十二月二十五日(日)
あらしのよるに 於 歌舞伎座
この月すでに三回見た『寺子屋』をもう一回リピートしようと思ってたけど、うーん、諸事情を鑑みて、そのリソースを『あらしのよるに』再見に充てることにした(寺子屋は、松也の源蔵の暑苦しい演技がリピートするたび気になってきたので…)(弘太郎の涎くり、ものすごく大好きなんだけど、涎くりよりも生身の弘太郎のほうが前に出てくる瞬間が何度かある)(猿弥(49)はどのような役をやっても、そのような瞬間がまずない。猿弥(49)すごい)。
獅童の“がぶ”は相変わらず最高ですね。食欲と友情の板挟みになるところが、よく表現されてました。なお、昨年の八月、石垣島で「ヤギそば」なるものを食った拙僧としましては、がぶの視点からこの物語を見ておりました(笑。ヤギ肉とヨモギの風味が合うんでやんすよ! ただクセのある味なので万人にはすすめません。沖縄人でもヤギ苦手な人は多いです)。
松也の“めい”も、獅童とまったく対照的なキャラクターをちゃんと演じきっていた。“がぶ”と“めい”。この肉食系と草食系(文字通り!)の対比って、曾我兄弟を思わせますよね(とか書くのは安直ですか。安直だったらすいません)。
良い意味でカブキカブキしてたのが権十郎(江戸の世話物のやくざみたい)と梅枝(時代物のお姫様)。こういうカブキカブキした演じ方のキャラクターがちゃんといるので、芝居が現代劇方面に押し流されて戻ってこられなくなる、ということがない。
結末を観て思ったのが、歌舞伎って、「友情」というテーマを表現する方法が意外に確立されてないのでは、ということ。歌舞伎では主従愛とか師弟愛とか夫婦愛とか親子愛とかは描かれても、友情が描かれるシーンがあんまり無いような気がする(おれが知らないだけか……カブキくわしい人から見たら間抜けなこと書いてるのかもなあ、これ)。だからかどうかは分かりませんが、最後のシーンのがぶとめいは、友達同士と云うよりも、恋人同士あるいは夫婦に見える。でも、めいが「〜でやんすよ」というがぶの口調をまねるところに友情を感じましたよ。
あと、竹松の“はく”、も忘れてはいけません。「ぼくたち、ヤギなんだけどなあ」とか、「作ったの、ぼくなんだけどなあ」とか、無言で親指を立てるところとか。
ちなみにこの日は、松也が本舞台から花道に出てくるところでリアルに転びそうになる、という放送事故もあり。笑
しかし、また見たいなあ、これ。近い将来、再々演してほしいです。
■一月四日(水)
しらぬい譚 於 国立劇場
いったん銀座三越で天むすを買ってから、タクシーで国立劇場まで移動。正月の都心のすがすがしい空気の中、タクシーに乗るのは楽しい。一月の国立劇場は、「お正月特番」なので、松の内に見ちゃいたい。旧ソビエトの役所のごとき国立劇場も、さすがに正月は正月ムード。
芝居は、わりとコムパクトにまとまっていたのではないでしょうか。分かりやすかったしね。客席を斜めに横切る宙乗り(“筋交い”、と呼ぶそうです)や猫の立ち回りとか、サービス要素もあって。
菊之助の美剣士ぶりが良い。橘太郎がチンピラっぽい侍、という珍しい役で出てる。亀蔵は…………数年前もスギちゃんやって(やらされて)ましたね。笑
ところで松緑って、見るたびに体型と顔の輪郭が変わってるような気がする。
■一月八日(日)
新春浅草歌舞伎 於 浅草公会堂
切符がお高くないし、正月の浅草で芝居見物の気分に浸れるので歌舞伎ビギナーの人におすすめしたい浅草歌舞伎。第一部、第二部を通しで。
梅丸の修理之助と、壱太郎の静御前が良かった。第二部も良いけど、第一部は余裕あればもう一回見ておきたいです。
にしても、浅草歌舞伎のポスターでの梅丸くんの扱い小さいだろー。
この日の浅草は小雨がしとしと降ってて肌寒かったので、終演後、並木藪蕎麦にて温かい天ぷらそば feat. 熱燗一合。
忠臣蔵第三部 於 国立劇場
8〜11段目。下女の“りん”とか、丁稚の伊吾とか、そういう役どころの人々が好きだったりする。 これはおれの性格。討ち入りのとこは、全体的に少々間延びした印象がなくはなかったけど、米吉が良かった。
■十二月二十四日(土)
舞台「パタリロ!」 於 紀伊國屋ホール
行きたかったのに、前売券がずっと手に入らないままだった舞台。当日券は、まさかのくじ引きだった。運良く買えてよかった(くじに外れてそのまま帰る人も少なからず目撃…)。
芝居の内容は、まあ、ファミ通のクロスレビュー風に書くと「原作ファンなら」、と云ったところか笑。いや、パタリロがいて、バンコランとマライヒがいて、タマネギ部隊がいればそれはもう『パタリロ!』だから。どんなドタバタも、どんな不条理も呑み込んで成立させてしまうフォーマット、それが『パタリロ!』だから(細かい“くすぐり”をガシガシ入れてくる小劇団的作風も、『パタリロ!』の作品世界と良くマッチしてたと思う)。
なので、逆に云えば、各キャラクターの再現度が高くないと、『パタリロ!』にはならないのですね。でもこの点は抜かりがなくて、パタリロはちゃんとパタリロだった。これ、地球上に加藤諒がいなかったら成立しなかった舞台だったと思う。この世に加藤諒がいて良かった。バンコランとマライヒも、バンコランとマライヒだった(マライヒがいささか三枚目寄りだったような気はしますが・笑)。そして特筆すべきは、タマネギ部隊のオンとオフの切り替えの描写でしょうなあ。「タマネギ部隊は実在した!」って思っちゃったよ。
平成30年には早くも続篇が予定されているようですが、松竹もぜひパタリロ歌舞伎をやってほしいところです。パタリロ役は猿弥(49)で。
■十二月二十五日(日)
あらしのよるに 於 歌舞伎座
この月すでに三回見た『寺子屋』をもう一回リピートしようと思ってたけど、うーん、諸事情を鑑みて、そのリソースを『あらしのよるに』再見に充てることにした(寺子屋は、松也の源蔵の暑苦しい演技がリピートするたび気になってきたので…)(弘太郎の涎くり、ものすごく大好きなんだけど、涎くりよりも生身の弘太郎のほうが前に出てくる瞬間が何度かある)(猿弥(49)はどのような役をやっても、そのような瞬間がまずない。猿弥(49)すごい)。
獅童の“がぶ”は相変わらず最高ですね。食欲と友情の板挟みになるところが、よく表現されてました。なお、昨年の八月、石垣島で「ヤギそば」なるものを食った拙僧としましては、がぶの視点からこの物語を見ておりました(笑。ヤギ肉とヨモギの風味が合うんでやんすよ! ただクセのある味なので万人にはすすめません。沖縄人でもヤギ苦手な人は多いです)。
松也の“めい”も、獅童とまったく対照的なキャラクターをちゃんと演じきっていた。“がぶ”と“めい”。この肉食系と草食系(文字通り!)の対比って、曾我兄弟を思わせますよね(とか書くのは安直ですか。安直だったらすいません)。
良い意味でカブキカブキしてたのが権十郎(江戸の世話物のやくざみたい)と梅枝(時代物のお姫様)。こういうカブキカブキした演じ方のキャラクターがちゃんといるので、芝居が現代劇方面に押し流されて戻ってこられなくなる、ということがない。
結末を観て思ったのが、歌舞伎って、「友情」というテーマを表現する方法が意外に確立されてないのでは、ということ。歌舞伎では主従愛とか師弟愛とか夫婦愛とか親子愛とかは描かれても、友情が描かれるシーンがあんまり無いような気がする(おれが知らないだけか……カブキくわしい人から見たら間抜けなこと書いてるのかもなあ、これ)。だからかどうかは分かりませんが、最後のシーンのがぶとめいは、友達同士と云うよりも、恋人同士あるいは夫婦に見える。でも、めいが「〜でやんすよ」というがぶの口調をまねるところに友情を感じましたよ。
あと、竹松の“はく”、も忘れてはいけません。「ぼくたち、ヤギなんだけどなあ」とか、「作ったの、ぼくなんだけどなあ」とか、無言で親指を立てるところとか。
ちなみにこの日は、松也が本舞台から花道に出てくるところでリアルに転びそうになる、という放送事故もあり。笑
しかし、また見たいなあ、これ。近い将来、再々演してほしいです。
■一月四日(水)
しらぬい譚 於 国立劇場
いったん銀座三越で天むすを買ってから、タクシーで国立劇場まで移動。正月の都心のすがすがしい空気の中、タクシーに乗るのは楽しい。一月の国立劇場は、「お正月特番」なので、松の内に見ちゃいたい。旧ソビエトの役所のごとき国立劇場も、さすがに正月は正月ムード。
芝居は、わりとコムパクトにまとまっていたのではないでしょうか。分かりやすかったしね。客席を斜めに横切る宙乗り(“筋交い”、と呼ぶそうです)や猫の立ち回りとか、サービス要素もあって。
菊之助の美剣士ぶりが良い。橘太郎がチンピラっぽい侍、という珍しい役で出てる。亀蔵は…………数年前もスギちゃんやって(やらされて)ましたね。笑
ところで松緑って、見るたびに体型と顔の輪郭が変わってるような気がする。
■一月八日(日)
新春浅草歌舞伎 於 浅草公会堂
切符がお高くないし、正月の浅草で芝居見物の気分に浸れるので歌舞伎ビギナーの人におすすめしたい浅草歌舞伎。第一部、第二部を通しで。
梅丸の修理之助と、壱太郎の静御前が良かった。第二部も良いけど、第一部は余裕あればもう一回見ておきたいです。
にしても、浅草歌舞伎のポスターでの梅丸くんの扱い小さいだろー。
この日の浅草は小雨がしとしと降ってて肌寒かったので、終演後、並木藪蕎麦にて温かい天ぷらそば feat. 熱燗一合。