■五代目歌舞伎座 初日 |
▲歌舞伎座 開場直前
■新しい歌舞伎座に行ってきたわけだぁ!
と、'80年代前半の石橋(歌舞伎クラスタの皆様、「しゃっきょう」ではありません。とんねるず石橋貴明のことです)のような勢いになるなという方がムリでしょう。團十郎の助六が花道を駆け、玉三郎の揚巻が本舞台から絶妙な角度で振り返ってそれを見送り、定式幕が引かれて早三年。サクラダ・ファミリアのように、もう永久に完成しないのではないかとさえ感じられた歌舞伎座がようやく完成しました。背後になんか28階建てくらいのビルが見えるような気がしますが、たぶん目の錯覚かなんかでしょう。歌舞伎座の背後にオフィスビルが建つなんて、どう考えたっておかしいもんね。
■さて、新しくなった歌舞伎座の初日、第一部から第三部まで各部の一等席の切符を手に入れることができました。これも拙僧の法力の賜物うんぬん、と、いつもならそんな自慢をするところですが、今回ばかりは切符が手に入ったことを素直に感謝しておきたいところです。
■当日は、平成22年御名残四月大歌舞伎の千穐楽と同じく雨でしたので、傘を差していったんですが、この傘は昨年五月の平成中村座の大楽の終演後に、売店で買った物です。700円。あの日の浅草もまた雨でした。
午前10時ちょっと過ぎに歌舞伎座に着いたんですが、小腹が減っていたので、近所の「小諸そば」で腹ごしらえをしました(歌舞伎そばはまだ開いてなかったので)。で、おれがそばを食ってる間に「一番太鼓の儀」というものがあったらしいです。そば食ってて見逃しました。まあ、次の歌舞伎座の建て替えの時こそはちゃんと見物しておきたいと思います。
歌舞伎座前は見物客と報道陣でそこそこ混んでましたが、雨が降ってなかったらそれこそ時はまさに世紀末って感じの混雑になっていたでしょう。切符は持ってないけど歌舞伎座まで来た、というおばあ様がテレビ局にインタビューされてました。
■で、開場時間になりましたので、真新しい劇場に足を踏み入れました。久々の歌舞伎座。さよなら公演の2010年にタイムスリップしたような気分になりつつ、混雑したロビーでイヤホンガイドを借り、混雑したロビーで筋書きを買って、混雑したロビーを抜けて二階席へ。
以降、ちょっと買い物するために外出したりするも、終演の午後九時半くらいまでずっと歌舞伎座の中におりました。
■劇場としての歌舞伎座の感想を書くと、ええ、確かにきれいになって便利になったし、昭和60年代の水準だったトイレも現代的になったしで、そこは進歩なのですが、ちょっとさっぱりしすぎちゃったかなって思うんですよね。
劇場内を歩いていると、ゲリラ的におばちゃん向けの洋品店が視界に飛び込んできたり、佃煮会社の謎の人形のディスプレイがあったり、オリエンタルマースカレー人形があったり、縁日みたいになってる一角があったり、それでいて吉兆があったり、劇場のすぐ外には歌舞伎そばや焼き栗の屋台があったり、という良い意味でのゴチャゴチャ感が、歌舞伎座の魅力の一つを形成していた、と云っても過言じゃなかったんです。
新しい歌舞伎座は、こういう言い方もなんですが、新橋演舞場的、あるいは地方空港的です。売店一つとっても、以前の歌舞伎座はフロアごとに微妙な違いがあった。いまでは、各フロアの売店がどれもクローン培養したように同じ顔つきで面白みがない。
三階の店が並んでるとこも、地方都市のデパ地下みたいなことになっちゃってるし、木挽町広場とか云われても、いったん劇場を出て地下に降りないと買い物できないのはさておき、そもそもこれまでの歌舞伎座の風情から遠くかけ離れてる。
いずれにせよ、「いろんなお店が集合しているが故にもたらされるバイタリティー」のようなものがなくなったのは残念。いまからでも遅くはないので、なんとか工夫してもらえないでしょうか。それが劇場としての活気だけではなく、ひいては芝居の雰囲気にもつながると思うんです。(談)
でもまあ、歌舞伎座内部は、そんなに変ないじられ方をされてなかったので良かった。さっきも書いたように、2010年に戻れたような感覚が得られたくらいだからね。
■芝居についてさらっと書きますと、第一部の最初のやつは魁春が良かった。十八世中村勘三郎に捧ぐ、というクレジットが冠せられた『お祭り』は、脳の情報処理が追いつかないくらいメンツが豪華だったけど、やはり小山三さんとナオヤくん。『熊谷陣屋』で、久しぶりに玉三郎が歌舞伎をやってるとこを見た。
第二部は、弁天小僧を三年ぶりに見る。『忍夜恋曲者(しのびよるこいはくせもの)』は、タイトルから「若い二人の道行」みたいなものを勝手に想像していたが全然違う内容だったので全米が震撼した。ガマがかわいい。
第三部。『盛綱陣屋』はこういう時にやる芝居としてはちょっと重いなーと思ったけども、こういうのもカブキ。『勧進帳』は、前列の超上手、で見ていたので、富樫はずっと背中しか見えないんだけど、変わったアングルで見る勧進帳もまた一興。ただ、最後の引っ込みで手拍子するのは違うんじゃないかなあ。
■おれは歌舞伎を見始めて三年ちょっとになるんですが、2010年3月から見始めたものだから、歌舞伎座で芝居見物をしていた時期と云うのがわずか二ヶ月しかないんですね。なのでこれからは歌舞伎座でいろいろ見ることになるので、楽しみです。
しかし、新しい歌舞伎座の初日の芝居を全部一等席で見る、なんて贅沢をやらかすと、バチが当たってしまいそうで怖いです。あるいは、もうすでに当たっているのかもしれません…。とうぶんは慎ましくしておきます。
▲歌舞伎座 終演直後
あ、あと、この日は着物の男性が多かった。おれも多少の雨に怖じずに、着物を着てくべきでした。
それと、第二部は一階東側の桟敷席が全員芸者さんでした。ゲイシャ・ガールズでした。