■京半蔵商店(四)。ステーキ丼、変なタクシー、そしてまた京都に負けた |
(東都のにわか歌舞伎ファン、南座の顔見世を見物しに行ったまではよかったがその後は、の日記)
【十二月十一日土曜日 昼食→東に下る】
■レストランから自分の部屋に戻って、スーツの味噌汁を絞ったタオルで拭く。京都まで来てなにをやっているんだろう、おれは。
たまたま点けてたテレビに市川染五郎が出てて、ぐっさんに「トマトライス」なる料理を振舞っていた。おれもこんど家で作ってみよう。しかし最近の染五郎が、“はんにゃ”の金田に似つつあるような気がするのは気のせいか。
■さっきのレストランの件を弟に電話。
「けっきょくカレーのココイチくらいの店が、値段とサービスの質がいちばんバランスよく折り合いついてるよね。どんな都市にもあるし」という話題になる。
■11時チェックアウト。Wホテルの名誉のために書いておきますが、ホテル自体はまっとうなんです。'11年度版のミシュランにも載ってるくらいだし。ただ、Aレストランの……いや、もうやめよう。書いてて楽しくねえし。
■地下鉄に乗って京都市役所方面へ。京都駅の建物よりも、京都市役所の建物を見たときの方が「京都にやってきたー!」という実感が得られるね。
そこから10分ばかりてくてく歩いて、こちらの肉料理のお店へ。ステーキ丼2800円を発注。うまい。ライスの量が「ちょうど良い少なさ」で良いバランス。あと、食後のコーヒーのカップも、ちょうどよい小ささ。
このお店ではビーフカツサンドを持ち帰りで頼むのが定番らしいのですが、おれは別の店のサンドイッチ(後述)を買う予定だったので、今回は頼まず。でも、他のメニューもいろいろ試してみたいですね。(談)
■肉料理の店を出て北へとぼとぼ歩く。いつの間にか、ブライトンホテルの前まで来ていた。そこからタクシーを拾って○×神社へ。以前、とある本で読んで、一度訪れてみたかったので。
■さて、この拾ったタクシーの、ねずみ男みたいな顔した運転手氏が変な人であった。おれが乗るや否や、「こんにちはご乗車いただきましてありがとうございますお客様のご期待に沿えるよう勤めさせていただきます」云々、という、早口でものすごく棒読みの口上を開始。なんだよそれ。わずか数秒のことだが、長く感じた。
口上が終わり、「どちらまで行かれますか」とようやく人間らしい口調で訊くので、○×神社までお願いする。
■数分後、○×神社の近所にタクシーが着いた。ほんの30メートル先に、○×神社の鳥居が見える。
「えー、ここが○×神社なんですが、どこ停めましょう」と運転手が訊くので、
「いや、ここでいいですよ」と、おれは答えた。
すると運転手が、
「えぇっ!? ここでですかっ!?」
と、驚いた声を出した。なんだよ、お前。
■もしかすると、もしかするとだけど、京都では、タクシーで「○×神社まで」とお願いしたら、「○×神社そのものズバリ」ではなく、「○×神社の付近一帯」を指すのだろうか。で、いったん○×神社の近くまで来たところで、その周辺の店なり民家なり会社なりの位置を改めて細かく指示するのが普通なんだろうか。
──と、思おうとしたけど、これくらいのことでいちいち驚かれても困る。○×神社に行きたいから○×神社までとお願いしたんだよ。どこもおかしいとこはないだろ。
■ようやくおれの意図を理解した運転手氏が、「あ、そういうことなら鳥居の前まで車をつけます」とおっしゃってくれたんだけど、おれはこのタクシーから一秒でも早く脱出したかったので、その場で降りた。
■で、○×神社を参拝したのですが────すいません、本を読んで期待しすぎていました。すいません。神社やお寺は、観光客の幻想に応えてやるために存在するわけじゃないんですよね。
中学校のグラウンドくらいの広さの境内をぐるりと一回りして終了。
で、せっかくだから近くの△□寺も訪れようとしたタイミングで、雨が降り始めた。
■旅の途中の雨は、人をみじめな気にさせる。朝は味噌汁で、昼は雨ですよ(味噌汁は自業自得ですが)。
もう、△□寺の前でさっさとタクシー拾って市街地まで戻ることにする。○×神社と△□寺の滞在時間は、トータルで11分くらい。この11分のために、往復のタクシー代2500円…。ま、いいけどさ。
■イノダコーヒ本店でタクシーを降りる。コーヒーを発注。どんな味だったかを再確認しておきたかったので。それと、クラブハウスサンドイッチをテイクアウト。
■で、上手くいかなかった旅は、さっさと撤収するに限る。早く帰りたい。もう、予定を早めてとっとと東京に戻ることにする。
地下鉄で京都駅まで。Wホテルの出張所で荷物を受け取り、新幹線の窓口で切符の時刻を2時間早めてもらう。
■午後三時。新幹線に乗る。芸能人なのでグリーン車。
それはいいが、ガキがうるさい。親の方も、いちおうちゃんと叱ってはいるのだが、抑止力が全くない。叱られてるほうの子供も「あー、声質と音量からすると、これは無視してよいパターンの叱り方だわ、うんうん」と判断してるのだろう。
しかし、こちとらゆっくりしたくてグリーン車に乗ってるのに、この有様だ。「未就学児童禁止車両」とか、逆に「ファミリー連れ専用車両」とか設定してほしい。
■標高が3700〜3800メートルくらいあるという噂の、日本一高いと云われる何とか山を車窓から眺めつつ、イノダのクラブハウスサンドイッチを食べる。ビールを飲む。
旅の疲れか、ビールの酔いがいつもよりだいぶ早く回り、気分が悪くなる…。350ml缶を半分飲んだだけでこの有様。もうね。('A`)
■騒ぐガキの声とビールの酔いをこらえつつ、新幹線はやっと東京23区内へ。東京タワーの姿を見て、こんなにホッとしたのは初めてだ。
■で、東京駅着いて、山手線に乗り換え。
山手線の中で、東京駅から巣鴨あたりまで、ずーっと紙コップの中の氷を噛み砕き続ける変なブスがいたが、そのブス氷の音をも温かく受け止めてあげたくなるほど、東京に帰ってきてホッとした。
■で、石神井町のアパートに無事戻って、スーツをクリーニングに出して、ようやく今回の京都滞在を終えたという感じですね。
■以上だ。
【十二月十一日土曜日 昼食→東に下る】
■レストランから自分の部屋に戻って、スーツの味噌汁を絞ったタオルで拭く。京都まで来てなにをやっているんだろう、おれは。
たまたま点けてたテレビに市川染五郎が出てて、ぐっさんに「トマトライス」なる料理を振舞っていた。おれもこんど家で作ってみよう。しかし最近の染五郎が、“はんにゃ”の金田に似つつあるような気がするのは気のせいか。
■さっきのレストランの件を弟に電話。
「けっきょくカレーのココイチくらいの店が、値段とサービスの質がいちばんバランスよく折り合いついてるよね。どんな都市にもあるし」という話題になる。
■11時チェックアウト。Wホテルの名誉のために書いておきますが、ホテル自体はまっとうなんです。'11年度版のミシュランにも載ってるくらいだし。ただ、Aレストランの……いや、もうやめよう。書いてて楽しくねえし。
■地下鉄に乗って京都市役所方面へ。京都駅の建物よりも、京都市役所の建物を見たときの方が「京都にやってきたー!」という実感が得られるね。
そこから10分ばかりてくてく歩いて、こちらの肉料理のお店へ。ステーキ丼2800円を発注。うまい。ライスの量が「ちょうど良い少なさ」で良いバランス。あと、食後のコーヒーのカップも、ちょうどよい小ささ。
このお店ではビーフカツサンドを持ち帰りで頼むのが定番らしいのですが、おれは別の店のサンドイッチ(後述)を買う予定だったので、今回は頼まず。でも、他のメニューもいろいろ試してみたいですね。(談)
■肉料理の店を出て北へとぼとぼ歩く。いつの間にか、ブライトンホテルの前まで来ていた。そこからタクシーを拾って○×神社へ。以前、とある本で読んで、一度訪れてみたかったので。
■さて、この拾ったタクシーの、ねずみ男みたいな顔した運転手氏が変な人であった。おれが乗るや否や、「こんにちはご乗車いただきましてありがとうございますお客様のご期待に沿えるよう勤めさせていただきます」云々、という、早口でものすごく棒読みの口上を開始。なんだよそれ。わずか数秒のことだが、長く感じた。
口上が終わり、「どちらまで行かれますか」とようやく人間らしい口調で訊くので、○×神社までお願いする。
■数分後、○×神社の近所にタクシーが着いた。ほんの30メートル先に、○×神社の鳥居が見える。
「えー、ここが○×神社なんですが、どこ停めましょう」と運転手が訊くので、
「いや、ここでいいですよ」と、おれは答えた。
すると運転手が、
「えぇっ!? ここでですかっ!?」
と、驚いた声を出した。なんだよ、お前。
■もしかすると、もしかするとだけど、京都では、タクシーで「○×神社まで」とお願いしたら、「○×神社そのものズバリ」ではなく、「○×神社の付近一帯」を指すのだろうか。で、いったん○×神社の近くまで来たところで、その周辺の店なり民家なり会社なりの位置を改めて細かく指示するのが普通なんだろうか。
──と、思おうとしたけど、これくらいのことでいちいち驚かれても困る。○×神社に行きたいから○×神社までとお願いしたんだよ。どこもおかしいとこはないだろ。
■ようやくおれの意図を理解した運転手氏が、「あ、そういうことなら鳥居の前まで車をつけます」とおっしゃってくれたんだけど、おれはこのタクシーから一秒でも早く脱出したかったので、その場で降りた。
■で、○×神社を参拝したのですが────すいません、本を読んで期待しすぎていました。すいません。神社やお寺は、観光客の幻想に応えてやるために存在するわけじゃないんですよね。
中学校のグラウンドくらいの広さの境内をぐるりと一回りして終了。
で、せっかくだから近くの△□寺も訪れようとしたタイミングで、雨が降り始めた。
■旅の途中の雨は、人をみじめな気にさせる。朝は味噌汁で、昼は雨ですよ(味噌汁は自業自得ですが)。
もう、△□寺の前でさっさとタクシー拾って市街地まで戻ることにする。○×神社と△□寺の滞在時間は、トータルで11分くらい。この11分のために、往復のタクシー代2500円…。ま、いいけどさ。
■イノダコーヒ本店でタクシーを降りる。コーヒーを発注。どんな味だったかを再確認しておきたかったので。それと、クラブハウスサンドイッチをテイクアウト。
■で、上手くいかなかった旅は、さっさと撤収するに限る。早く帰りたい。もう、予定を早めてとっとと東京に戻ることにする。
地下鉄で京都駅まで。Wホテルの出張所で荷物を受け取り、新幹線の窓口で切符の時刻を2時間早めてもらう。
■午後三時。新幹線に乗る。芸能人なのでグリーン車。
それはいいが、ガキがうるさい。親の方も、いちおうちゃんと叱ってはいるのだが、抑止力が全くない。叱られてるほうの子供も「あー、声質と音量からすると、これは無視してよいパターンの叱り方だわ、うんうん」と判断してるのだろう。
しかし、こちとらゆっくりしたくてグリーン車に乗ってるのに、この有様だ。「未就学児童禁止車両」とか、逆に「ファミリー連れ専用車両」とか設定してほしい。
■標高が3700〜3800メートルくらいあるという噂の、日本一高いと云われる何とか山を車窓から眺めつつ、イノダのクラブハウスサンドイッチを食べる。ビールを飲む。
旅の疲れか、ビールの酔いがいつもよりだいぶ早く回り、気分が悪くなる…。350ml缶を半分飲んだだけでこの有様。もうね。('A`)
■騒ぐガキの声とビールの酔いをこらえつつ、新幹線はやっと東京23区内へ。東京タワーの姿を見て、こんなにホッとしたのは初めてだ。
■で、東京駅着いて、山手線に乗り換え。
山手線の中で、東京駅から巣鴨あたりまで、ずーっと紙コップの中の氷を噛み砕き続ける変なブスがいたが、そのブス氷の音をも温かく受け止めてあげたくなるほど、東京に帰ってきてホッとした。
■で、石神井町のアパートに無事戻って、スーツをクリーニングに出して、ようやく今回の京都滞在を終えたという感じですね。
■以上だ。